(要約)
技術開発と事業開発は連続的なつながりを持つが,最終的に顧客の既存インフラ・設備の耐用年数や,受入れ可能なエネルギー価格の限界も踏まえた上で,異なる視点・発想で事業開発に取り組む必要がある。総合商社が大きな役割を果たした LNG の歴史を俯瞰し,日本が輸入を検討する有力な水素キャリアであるアンモニア,液化水素,LOHC の比較,さらに,長期的視点で,e-fuel,炭素除去技術による BECCS,DACCS の位置付けを述べる。気候条件,土地利用の制約等から日本の脱炭素は非常に厳しい条件下でおこなわざるを得ない。既に欧州で起こっているように,再エネ電力がオーバーフローした時の電力貯蔵を蓄電池だけでは対応不可能なことから,水素は大量,かつ,長期のエネルギー貯蔵手段である点を再認識する必要がある。日本が得意とする FCEV,定置用燃料電池は,末端の水素利用のアプリケーションの一つに過ぎず,今後もバッテリーの電流密度の更なる上昇とコスト低下で,厳しい競争に晒される。
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2050 年のカーボンニュートラルの実現のためには,燃焼排ガスなどの CO2排出源からCO2を分離回収し,貯蔵・固定化することが必要不可欠である。化学吸収法は,比較的ガス量が多くCO2濃度が低い燃焼排ガスからのCO2分離・回収に適しているが,CO2再生工程で大量の熱エネルギーを消費することが課題である。本稿では,低熱量でCO2の回収が可能な非水系の新規吸収液を用いた省エネルギー型CO2分離回収技術のオンサイト実証試験について報告する。
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燃焼室出口に設置したレーザ式排ガス分析計を用いてリアルタイム測定した燃焼排ガスのO2濃度と炉内に供給している燃焼空気流量の測定値を用いて,従来方法よりも簡易にボイラー蒸発量を予測できる方法を考案した。本方法によるボイラー蒸発量予測値は,従来方法と同様にボイラー蒸発量実測値に対し4〜6分先行して変動を検知できる。都市ごみ焼却プラントの自動燃焼制御でボイラー蒸発量実測値の代わりに本方法によるボイラー蒸発量予測値を用いて制御をおこなった結果,燃焼安定化により実測値を用いて制御した場合と比べてボイラー蒸発量の変動幅を約40%に低減でき,従来方法によるボイラー蒸発量予測値を用いた場合と同等の結果を得た。また,排ガス再循環設備の再循環ガス流量の制御にボイラー蒸発量予測値を適用した結果,再循環ガス流量制御をおこなわない場合に比べて発生NOx濃度の変動が抑制され,触媒脱硝装置のアンモニア水使用量を約25%削減できた。
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当社は,2024年8月に三光株式会社殿に廃棄物焼却発電施設を納入した。本施設は,廃棄物を焼却処理するとともに,焼却した際の熱エネルギーを回収し,蒸気タービン発電機にて最大1,950kWの発電が可能となっている。発電した電力は,本施設と既存施設を含む潮見コンビナート内の電力負荷を賄い,余剰電力は周辺地域へ供給している。また,蒸気タービン排気の熱エネルギーを温水に変換し,施設内に併設された養殖設備で利用する計画となっている。本稿では,本施設の概要,特徴および運転結果について報告する。
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西知多クリーンセンターは,既存施設の老朽化にともない,東海市・知多市の2施設を統合する形で更新され2024年6月に竣工した。本施設では,最新の燃焼・運転制御技術により安定稼働を実現するとともに,高効率発電システムにより同規模施設では最高レベルの発電効率を達成し,運営事業を継続している。本稿では,本施設の特徴と引渡性能試験結果,各種運転状況について報告する。
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当社は,下水汚泥焼却と焼却廃熱による蒸気発電設備を組み合わせた,省エネ・創エネ型の下水汚泥焼却発電システムを札幌市西部スラッジセンターに納入した。2021年8月にしゅん功した新 1 系焼却施設に続き,このたび2024年3月に新2系焼却施設がしゅん功し,必要な性能を満足した上で安定的に稼動している。本システムは乾燥機,階段式ストーカ炉,廃熱ボイラ,蒸気発電機などを組み合わせることで,汚泥焼却時に補助燃料を使用することなく,低消費電力と蒸気発電により大幅な購入電力削減を実現できる。加えて汚泥を900℃以上の高温で焼却することが可能なため,温室効果ガスであるN2Oの排出を大幅に削減できる。すなわち,省エネ・創エネ,ランニングコスト低減,温室効果ガス削減を同時に実現する下水汚泥焼却発電システムである。
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