株式会社タクマ(本社:兵庫県尼崎市、代表者:加藤隆昭)はこのたび、廃棄物発電プラントや複合燃料を用いるボイラプラント等に広く適用可能な、レーザー式排ガス連続分析を用いたごみ質推定による自動燃焼制御システム(先行型燃焼制御)を開発し、特許を取得いたしました。
近年、多くの廃棄物処理施設において廃棄物焼却発電が積極的に進められておりますが、燃料となる廃棄物は熱量(ごみ質)が一定でないため、蒸発量が安定せず、安定的な発電が難しく、また発電量も低くなるといった問題をかかえております。当社はこの問題に対処すべく、レーザー式排ガス連続分析を用いてごみ質をリアルタイムで近似計算することでボイラ蒸発量の変動を約4分前に予測し、その予測値をごみの供給量や燃焼空気量にフィードフォワードさせることによって、安定的かつ高効率な発電が可能となる「先行型燃焼制御システム」を開発しました。
ごみの可燃分の大部分はCとHの元素で組成されており、これらは燃焼によって酸化されCO2とH2Oになります。その際発生する単位発熱量は元素ごとに決まっているため、排ガス中のCO2およびH2Oの発生量が分かることにより、燃焼によって発生した熱量をリアルタイムに計算することが可能となります。計算した熱量に燃焼空気の加熱分の熱量や焼却炉内への噴射水による潜熱等を加減し、さらに排ガス持ち出し熱量等を差し引くことによってボイラ吸収熱量を計算し、ボイラ蒸発量を予測するシステムとなっております。
実証試験を通じ、ボイラ蒸発量予測値はボイラ蒸発実測値に対して約4分先行して検出されるとの結果を得たことから、従来のフィードバックボイラ蒸発量制御にフィードフォワードボイラ蒸発量予測値を加え、ごみの送り量制御と燃焼空気量制御を補正した制御ブロックを自動燃焼制御システムに組み込んだ「先行型燃焼制御」を開発し、燃焼の安定化を実現しました。
① | ボイラ蒸発量の安定 |
ボイラ蒸発量を先行予測し制御することで、蒸気量のばらつき(標準偏差)を3分の1以下に抑制することができます。 | |
② | 発電量の増加 |
ボイラ蒸気量の変動が少なくなり、タービン入口蒸気量の落ち込みが少なくなること、またタービンバイパスへの流出蒸気量を抑えることが可能となり、発電量は約1.5%向上します(5,000kWの発電出力で約1,800kWh/日)。 | |
③ | 所内消費電力と各種用役の減少 |
燃焼が安定し排ガス量の変動が少なくなることで、機器への負荷が下がり、所内消費電力と薬品使用量が低減することが期待できます。 | |
※①~③はいずれも従来の自動燃焼制御システムとの比較。 |
先行型燃焼制御により、発電量のばらつきを抑え、いわゆる「同時同量供給」がしやすくなるのと同時に発電量の増加にもつながり、廃棄物発電のベース電源としての価値を一層高めることができます。近年、廃棄物処理施設はごみを安全かつ衛生的に処理するだけでなく、より高効率な発電施設として活用したいというニーズが高まっており、当社はこのニーズに応えるべく、既設および新設のお客様に本システムを提案してまいります。
また、本システムは廃棄物の焼却だけでなく、CとHの酸化反応を主とするすべての燃焼反応に適用できるため、バイオマスと石炭といった複合燃料を使用するボイラプラント等にも幅広く適用することができ、これらのお客様に対しても本システムを提案していきたいと考えております。