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タクマ技報 VOL.30NO.1(2022年06月発行)

表紙写真:札幌市西部スラッジセンター
タクマ技報 VOL.30NO.1(2022年06月発行)

巻頭論説

人口減少社会における持続可能な未来の下水道―― SDGs と脱炭素の観点から ――

解説

カーボンプライシングを巡る状況について
武田 桃子*
(*東京技術企画部)

(要約)

カーボンプライシングは,温室効果ガスに金銭的価値を付けることにより気候変動 を緩和へと導く政策手法である。この手法は,以前から導入・検討されており,フィンランド による世界初の炭素税導入から 30 年以上が経つが,近年は世界的なカーボンニュートラルの 高まりとともにさらに注目が集まっている。そして,昨年 11 月に開催された COP26 におけ るグラスゴー気候合意は,カーボンプライシングへの取組みに対する重要性をさらに強固なも のにした。我が国においても,2020 年のカーボンニュートラル宣言以降,本格的な検討が開 始され,現在は,環境省による地球温暖化対策税の見直しと,経済産業省による自主的な排出 量取引制度を想定した GX リーグ構想やカーボン・クレジット市場の創設が提案されている。 カーボンプライシングが本格的に導入されることになれば,廃棄物分野やバイオマス発電にお いても大きな影響をもたらすとみられる。本稿は,カーボンプライシングの動向を解説すると ともに,廃棄物分野への影響についても考察することを試みる。なお,このレポートは 2022 年 2 月上旬までの情報をもとにまとめたものであり,今後めまぐるしく変わる可能性があるこ とに注意されたい。

報告

ボイラーエコノマイザへの圧力波式ダスト除去装置(VSPS) 適用の実証試験報告
林 京平*・加藤 考太郎*・藤田 泰行*
(*技術開発部)

(要約)

ボイラーダスト除去装置に関して,従来の蒸気式スートブロワの代替となる当社独 自の圧力波式ダスト除去装置を開発した。既報では,本装置をごみ処理量 110 t/日・炉と 250 t/日・炉の都市ごみ焼却施設の過熱管群へ適用した実証試験の結果について報告した。本稿で は,エコノマイザへの適用を目的として,ごみ処理量 240 t/日・炉の都市ごみ焼却施設のエコ ノマイザへ適用した実証試験の結果について報告する。

高速型ユニフロのコンパクト機開発
﨑山 敦史*・山本 征一郎 *・岸 研吾*・西田 明弘*
(*水処理技術部)

(要約)

近年の増加する下水処理場の既設更新工事において,当社は,既設の固定床砂ろ過 装置から上向流移床式砂ろ過装置 (ユニフロ) への方式変更を提案している。この更新工事に おけるユニフロ適用の機会拡大を目的に,装置の高さを縮減したコンパクト機の開発を進めて おり,実証試験においてコンパクト機の正常稼働および所定性能の発揮を確認したので報告す る。

ごみ処理施設における自動運転の実現に向けた取り組み
工藤 隆行*・井藤 宗親*
(*環境技術1部)

(要約)

これからのごみ処理施設は,少子高齢化・労働人口減少にともなう人材不足に対応 しつつ,時代のニーズにマッチしたごみ処理を継続しなければならない。当社は施設運転のさ らなる自動化に取り組むことによって,この課題の解決を目指している。
  その 1 つとして,AI 技術を活用した燃焼制御システム (ICS) を開発し,燃焼設備の高度 な自動運転を実現しているが燃焼設備以外でも手動介入操作が必要な場合があった。今回 ICS による自動運転に加えて,燃焼設備以外に手動介入抑止制御を導入することによって,ごみ処 理プラントの手動介入操作をほぼ不要とすることができ,ごみ処理プラントの自動運転の実現 にさらに近づくことができた。

ごみ受入システムのスマート化
別枝 宏平*
(*環境技術1部)

(要約)

ごみの受入・貯留・撹拌を担う「ごみ受入システム」は,ごみクレーン操作や料金 精算など,従来,施設従事者の人手に依存していることが多い。しかし,近年労働人口の減少 にともなって省力化が求められている。さらに,利便性の向上や新型コロナウィルス感染拡大 防止の観点から対面業務の削減という新たな課題もあり,当社は車両ナンバー読取装置やごみ レベルセンサーなどを積極的に導入することで ICT 活用によるごみ受入システムのスマート 化を進め,これらの課題解決に取り組んでいる。

粉体シミュレーションの適用による流動層下部ホッパーの解析
和田 昇大*
(*エネルギー技術1部)

(要約)

近年,数値シミュレーション技術はその汎用性が認められ,研究開発や装置開発に 積極的に利用されるようになってきた。数値シミュレーション技術の進歩は,工学的なプロセ スの挙動を可視化するとともにその挙動に関連するさまざまな要素の数値化を可能とし,特に 装置設計において開発期間の短縮・性能向上の面で大きな助けとなっている。本稿では,粉体 解析ソフトウェア iGRAF®を用いて四角錐形状のホッパー内部に充填された粉体が最下部よ り排出されるプロセスをシミュレートし,実験機での挙動との比較について報告する。

札幌市西部スラッジセンターにおける下水汚泥焼却発電システムの試運転報告
村岸 弘基*・中西 譲*・水野 孝昭*
(*水処理技術部)

(要約)

当社は,下水汚泥焼却と焼却廃熱による蒸気発電設備を組み合わせた,省エネ・創 エネ型の下水汚泥焼却発電システムを札幌市西部スラッジセンターに納入した。本システムは 乾燥機,階段式ストーカ炉,廃熱ボイラ,蒸気発電機などを組み合わせることで,汚泥焼却時 に補助燃料を使用することなく,低消費電力と蒸気発電により大幅な所内使用電力削減を実現 できる。加えて 900℃以上の高温焼却が可能なため,温室効果ガスである一酸化二窒素の排出 を大幅に削減できる。すなわち,省エネ・創エネ,ランニングコスト低減,温室効果ガス削減 を同時に実現する下水汚泥焼却発電システムである。本設備は 2021 年 8 月にしゅん功後,必 要な性能を満足した上で安定的に稼動し,現在に至っている。

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