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タクマ技報 VOL.21NO.1(2013年6月発行)

表紙写真:常総環境センター
タクマ技報 VOL.21NO.1(2013年6月発行)

巻頭論説

公的団体としての日本環境衛生センターの役割

解説

下水汚泥のエネルギー化
岩崎 大介*
(*水処理技術部)

(要約)

下水汚泥は有効利用が期待されるバイオマス資源で、8割近くがリサイクルされているが、有機物基準でみたエネルギー化率は13%程度に過ぎない(2010年度)。エネルギー化率向上のため、再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度を初めとした様々なエネルギー化推進策がとられている。現在実施中のエネルギー化の大部分は嫌気性消化による消化ガスの発電利用だが未利用の消化ガスも多く、精製による都市ガス用途への利用など新技術が開発されている。固形燃料化による既設石炭ボイラでの燃料利用は、造粒乾燥・炭化など複数の技術が開発され実機が稼動し始めているが、立地条件と補助燃料コストによる制約がある。汚泥焼却発電は、従来は下水汚泥の高含水率という性状からごく一部の大規模施設を除き実現困難であった。しかし、近年の汚泥の低含水化技術と小規模蒸気発電技術の確立により、汚泥焼却発電による下水汚泥のエネルギー化が可能となる。

報告

常総地方広域市町村圏事務組合「常総環境センター」
宮川 透*
(*環境技術2部)

(要約)

常総地方広域市町村圏事務組合殿向け「常総環境センター」は、当社自治体向けガス化溶融プラントとして4件目の施設となり、2012年1月からの試運転を経て2012年7月に引き渡しを完了し、現在にいたるまで良好な運転を継続している。本施設では、排ガス処理薬剤としてナトリウム系反応剤の使用、溶融炉形状の適正化、チャー吹込量制御によるCO濃度の低減、エネルギー回収の効率化を図り、経済性の向上につながる運転を確立した。

相馬方部衛生組合「光陽クリーンセンター」
渡辺 純*
(*環境技術2部)

(要約)

2012年11月末、相馬方部衛生組合殿にごみ焼却施設を納入した。本施設は水噴炉であるが後段に空気予熱器および白煙防止用の空気加熱器を設置して熱回収を行い、白煙の防止ならびに場内給湯に供して余熱利用を行っている。また、排ガス処理装置としてろ過式集じん装置ならびに無触媒脱硝装置により有害ガス除去を行っている。約5ヶ月の試運転を行い、性能試験では所定の焼却能力を満足し、排ガス測定値も規制値を下回った。

脱硝触媒の現場再生方法の開発
美濃谷 広*・鈴木 賢*・倉田 昌明*・前田 典生*
(*装置技術部)

(要約)

ごみ焼却施設の維持管理費削減を目的として、脱硝触媒を触媒反応塔から取り出すことなく、現場での活性回復方法を確立するため、基礎試験および現場再生模擬試験を行った。現場再生模擬試験において、触媒の再生は酸性硫安の分解に必要な380℃程度まで昇温することで可能であり、脱硝率の低下や圧縮強度の低下がなく、20回再生可能(20年間の運転で年1回の再生を想定)であった。また、再生は昇温を含めて約20時間程度の短時間で可能であった。再生時に発生するSO2ガスは消石灰ペレット充填槽で除去が可能であり、NH3ガスは特別な薬剤等を使用せずとも、脱硝触媒の作用により窒素と水に分解除去することが可能であった。

蓄ふん燃料燃焼流動層ボイラ発電プラント 設置報告
山路 大輔*・小野 徳重*・向井 圭司*
(*エネルギー技術1部)

(要約)

当社は、畜ふんの有効利用方法の一環として、畜ふん燃料を燃焼させて、そのエネルギーを蒸気および電気として回収する技術を保有している。この技術を利用し2002年3月に畜ふん燃料燃焼流動層ボイラ発電プラントを南国興産株式会社殿に納入した。そして、畜ふんのさらなる利用拡大を目的とした2号機目となる発電プラントを2012年3月に同社へ納入した。本稿では、今回納入した畜ふん燃料燃焼流動層ボイラ発電プラントについて報告する。本プラントは13.1t/hの畜ふん燃料を使用してボイラで35t/hの蒸気を発生させ、その蒸気から最大16.5t/hの工場送気ならびに1,580kWの発電を行うものである。性能試験では、畜ふん燃料の良好な燃焼を実現し、プラントとして設計通りの熱電併給能力を発揮することを確認した。また、排ガスに関する規制値も満足することを確認した。

固定床型アナモックスプロセスによる高効率窒素除去技術に関する技術実証研究 その1
高木 啓太*・久留須 太郎*・入江 直樹*・宍田 健一*
(*水処理技術部)

(要約)

国土交通省が実施する「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」において,当社は,熊本市,日本下水道事業団と共同で「固定床型アナモックスプロセスによる高効率窒素除去技術に関する技術実証研究」を平成24年度事業として実施した。本事業では,熊本市東部浄化センター内に嫌気性消化汚泥脱水ろ液を処理対象とした計画処理水量50m3/日のアナモックスプロセスによる窒素除去実証プラントを建設・運転し,脱水ろ液に含まれるアンモニア性窒素を除去する技術としての適用性・有用性を実証した。2012年7~11月に実証プラントを建設し,その後の試運転・馴養を経て,2013年2月より実証プラントの本格稼働を開始した。現在,実証運転中であり,アナモックスプロセスの技術確立のための各種データを収集中である。

階段炉(ストーカー炉)を用いた2液調質型脱水汚泥の燃焼実験報告
渥美 幸也*・佐々木 徹*・中西 譲*・水野 孝昭*・株丹 直樹*・宍田 健一*
(*水処理技術部)

(要約)

従来の脱水汚泥と比較して低含水率化された2液調質型脱水汚泥(含水率70%程度)を対象とし、N2Oの発生を抑制しつつ、乾燥機不要で補助燃料を必要としない焼却システムの構築を目的として、階段炉を用いた燃焼実験を実施した。実験の結果、空気比1.3~1.4の条件において、脱水汚泥を焼却炉に直接投入し、補助燃料なしで炉出口温度800℃の維持、N2O排出量0.3kg-N2O/t-wet(従来の50%以下)を達成できた。この時の炉出口CO濃度(O2-12%換算)は15ppm以下、灰の熱灼減量は0.3%以下であった。実験時の汚泥供給方法はプッシャーによる方式としたが、汚泥の固着はなく、供給量は±10%程度の変動であり、安定した供給ができた。また、焼却量を±20%変動させた試験でも、問題なく良好な焼却ができた。

放射性セシウムの分離除去システム「t-RECs」
岩本 敬弘*・藤川 宗治*・藤平 弘樹*
(*技術開発部、
**(公財)京都高度技術研究所)

(要約)

当社では,放射性セシウムを高濃度に含む焼却飛灰から放射性セシウムを分離除去および濃縮処理するシステム「t-RECs」(ティーレックス)を開発した。本システムでは,飛灰を水で洗浄して放射性セシウムを抽出し,分子認識吸着剤を用いて洗浄水から放射性セシウムを分離除去する。本吸着剤はゼオライト等の吸着剤よりもセシウム選択性が高く,繰返し使用が可能なため,放射性物質を含む最終排出物を処理前の焼却飛灰の100分の1以下に減容することができる。本稿では,「t-RECs」の概要説明と性能評価試験結果について報告する。

一般廃棄物焼却灰中の塩素化合物の形態と熱処理による塩素低減の可能性
河野 孝志*・島岡 隆行*・Amirhonmayoun Saffarzadeh**・Shuo Yang**
(*技術開発部、
**九州大学大学院工学研究院)

(要約)

一般廃棄物ストーカー式焼却炉の焼却灰(乾灰,湿灰)を採取し,塩素の含有率および存在形態について調査した。塩素含有率は0.005~0.015g-Cl/g-ashであり,その57~84%が溶解性塩素であった。粒径が小さいほど塩素含有率が高く,2mm以下の灰に塩素全体のおよそ60%が含まれていた。難溶解性塩素の形態は,乾灰では結晶性塩素が観察されなかったが,湿灰では結晶性塩素であると考えられた。乾灰,湿灰の加熱により溶解性塩素が揮発し,焼却灰の塩素含有率が低減することを確認した。しかし,乾灰を1,000℃で加熱した際,一部の塩素が非晶質に取り込まれ,湿灰の加熱では結晶性塩素が再結晶化する等複雑な挙動を示した。

PLC計装システム「TS-PAT1000」の適用範囲の拡大
土居 一郎*・亀山 豊*
(*電気計装部)

(要約)

環境・エネルギー分野においてPLC計装システムの導入が増えてきている。当社でもグループ会社(TSC社)が独自に開発したPLC計装システム「TS-PAT1000」を2009年から導入し始め、ごみ焼却プラントの自動燃焼制御装置や中・小規模プラントにおける制御・監視システムとして複数の採用事例がある。今後さらなる導入を目指し、ボイラ発電付きごみ焼却プラントをターゲットにTS-PAT1000のシステム規模拡張を実施した。その結果、適用範囲の拡大に繋げることができた。

トピックス

『下水汚泥焼却発電システム』が国土交通省平成25年度B-DASHプロジェクトに採択
-低含水率脱水機+次世代型階段(ストーカー)炉+蒸気発電機-

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放射性セシウム分離除去システム「t-RECs」(商標登録出願中)

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